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黒沢明入門 2

AvatarA今度は私自身の黒澤明入門体験を語ろう。

1977年浪人生だった。
テレビで「羅生門」を見たのが黒澤初体験だった。
知的好奇心にもの凄い衝撃を受けて、頭の中がぐるぐる回っていた。

黒澤明は具体的に何が凄いか?⑦羅生門
http://spacecowboys33.blog130.fc2.com/blog-entry-261.html


1979年秋、大学生だった。
三劇での痛快時代劇3本立て「用心棒」「椿三十郎」「隠し砦の三悪人」。
劇場を出た時には三船敏郎になり切っていた。
血沸き肉躍る冒険譚としては最高の組み合わせだった。
この三本立てをきっかけに私は映画ファンとなり、大学時代は新旧和洋を問わず見まくった。

黒澤明は具体的に何が凄いか?⑭用心棒
http://spacecowboys33.blog130.fc2.com/blog-entry-317.html

黒澤明は具体的に何が凄いか?⑮椿三十郎
http://spacecowboys33.blog130.fc2.com/blog-entry-375.html

黒澤明は具体的に何が凄いか?⑫隠し砦の三悪人
http://spacecowboys33.blog130.fc2.com/blog-entry-314.html


次にDに誘われて見に行ったのがSABホールでのオールナイト。
黒澤現代劇の3本立てだ。
「酔いどれ天使」「生きる」「天国と地獄」
「生きる」が終わった時に客席から拍手が起きた。
初めての経験で拍手をしなかったが、気分は同じだった。
黒澤の映像テクニックに酔った夜だった。
この頃大学の図書館で小林信彦の「我々はなぜ映画館にいるのか」を借りて読んだ。
そのなかの「黒澤だけしか頭になかった」という評論でさらに深く黒澤にのめり込む。
酔いどれ天使の闇市を「本物よりも本物らしい」と評したのは黒澤の本質に触れる名言だ。

黒澤明は具体的に何が凄いか?④酔いどれ天使
http://spacecowboys33.blog130.fc2.com/blog-entry-143.html

黒澤明は具体的に何が凄いか?⑨生きる
http://spacecowboys33.blog130.fc2.com/blog-entry-289.html

黒澤明は具体的に何が凄いか?⑯天国と地獄
http://spacecowboys33.blog130.fc2.com/blog-entry-1912.html


この後もう一度DとSABホールで「醜聞」「白痴」を見たが、ちょっと箸休めといったところ。

黒澤明は具体的に何が凄いか?⑧白痴
http://spacecowboys33.blog130.fc2.com/blog-entry-267.html

黒澤明は具体的に何が凄いか?⑥醜聞
http://spacecowboys33.blog130.fc2.com/blog-entry-256.html


新開地に神戸シネマという映画館があった。
150円で3本立てを大スクリーンで見せてくれる学生にはうれしい映画館だった。
そこで大学時代に「生きる」が1週間かかったことがあった。
友達を誘って3日間通った。
でも友達の感想はイマイチだった。

ここまで私は「七人の侍」を観ていない。
昔の映画を見たいときは、レンタルビデオのない当時、毎月情報誌プレイガイドジャーナルをチェックして、名画座や自主上映を探すしかない。
大学時代の最後にようやく大阪の映画館での上映を見つけて駆け付けた。
黒澤明の最高傑作という評価は頭に入っており、期待はいやがおうにも高まった。
こういう時は期待外れに終わることが多いんだが・・・
見終わった時の感想はよくある「ワクワク感」でも「感動」でもなく「巨大な凄いものを観た」という感じだった。
上映終了後、少しの間席を立てずにいた。
燃える水車小屋の前で赤ん坊を託された菊千代が川にへたり込むシーンのように。

黒澤明は具体的に何が凄いか?⑩七人の侍
http://spacecowboys33.blog130.fc2.com/blog-entry-297.html

こうして私は黒澤明にはまった(入門した)のだった。
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テーマ : 映画情報
ジャンル : 映画

黒沢明 入門

AvatarAYOUTUBEで「ぷらすと 黒澤明入門」を見た。
春日太一と松崎健太という2人の映画評論家が司会の森郁月に黒澤映画の魅力を語る番組だった。
春日太一と松崎健太の黒沢好きが伝わってきて、黒沢ファンにとって楽しい時間を過ごさせてもらった。

「ぷらすと 黒澤明入門」
https://www.youtube.com/watch?v=7r6NjKQ2-ng

番組の最後に2人の映画評論家のおすすめの入門編を紹介していた。

春日太一
隠し砦の三悪人、用心棒、生きる

松崎健太
野良犬、七人の侍、天国と地獄

私なら松崎健太の七人の侍を隠し砦の三悪人に入れ替えるかな。
いきなり神戸ビーフに行かずにまずは美味しいトンカツから味わってもらう。
って感じです。

野良犬は世界中の刑事映画に影響を与えている「世界の黒澤」を体験してほしい。
天国と地獄は森郁月の初見での感想が全てを物語っている。
「これはクラシックなんかではなく、今見るべき映画じゃないか!」
その通りだと思う。
黒澤明の映画は有難がって観るものではなく、楽しんでファンになる映画だから。

テーマ : 日本映画
ジャンル : 映画

『七人の侍』の早送り

AvatarA
大晦日に放送した『七人の侍』を録画しておいたのを見た。

前から気になっていた水車小屋のシーンを注意してみた。

野武士に焼かれた水車小屋から百姓女が赤子を抱いて脱出し、三船に預け倒れる。

三船は川にへたりこみ「こいつは俺だ。俺もこの通りだったんだ」と叫ぶ、あのシーンだ。

最初黒澤得意のスローモーションで観客をシーンに引きずり込む手法だと思ってた。

しかし以前に見返した時にそうではないことを確認した。

ただ、何か普通のシーンと違う印象は残った。

今回見てその印象のもとは早送りだと思った。

黒澤はアクションシーンに早送りを多用する。

特に馬が駆けるシーンは必ずと言っていいぐらい早送りだ。

これはジョン・フォードのマネらしい。

このシーンは疾走感を出す狙いではない。

戦いの中で三船の生い立ちを観客に印象付けるという凄いシーンだ。

「黒澤のスローモーションについて」で黒澤は極度の緊張感を表すためにスローモーションを使うことを紹介したが、これは逆に早送りしている。

そしてこれも観客に強烈な印象を残す。

それが早送りのせいかどうかは良く分からないけど、尋常じゃない状況である印象を与えるのには成功していると思う。

テーマ : 昔の映画
ジャンル : 映画

「赤ひげ」

AvatarA
大みそかにNHK-BSで黒澤の作品を5本放映した。
それも傑作ぞろい。
「生きる」「七人の侍」「用心棒」「椿三十郎」「赤ひげ」

「赤ひげ」が「天国と地獄」なら完ぺきだと思った。

以前にも触れたが、黒澤の全盛期は「天国と地獄」で終わった。
「赤ひげ」は映画技術としては凄いけど、あの黒澤映画特有のワクワク感がない。

今回何年かぶりで見直したが、その評価は変わらない。
ただ、忘れていたことや以前とは違う印象を受けた点があった。
その話をしよう。

映画は1時間50分経過したところで休憩が入る。
これを境に前半と後半に分かれる。

前半の印象は以前と変わらない。
技術は凄い。
山崎努と桑野みゆきの回想シーンはいずれもリリシズムにあふれ、美しい。
根岸明美の長台詞の名演技。
香川京子の狂女のリアリズム。
いずれも素晴らしいが、肝心のストーリーとそれを支えるモラルが、どうしても陳腐で見る者の心に突き刺さってこない。

この映画を作るにあたり黒澤は「日本映画の危機が叫ばれているが、それを救うものは映画を創る人々の情熱と誠実以外にはない。」と述べているが、彼自身がこの言葉に囚われ、平坦な物語と人物描写に陥ったのではないかと思う。
つまり、誠実さを意識しすぎ、ストレート過ぎる表現になってしまったのだ。
かつての黒澤映画は観客の予想を上回るダイナミックなシーンがぎゅうぎゅうに詰め込まれていたが、この前半にはそれがない。

まあこっちが勝手に期待したのが悪いのかもしれないけど。

物語は加山雄三扮する若い医師を中心に進む。
彼は長崎帰りで箔をつけ幕府の御番医になるつもりが、庶民相手の小石川療養所に掘り込まれ不満たらたらだ。
療養所の長である赤ひげ三船敏郎も自分の行く道を邪魔する存在としか思えない。
前半は加山がだんだん赤ひげを理解し、尊敬していく過程が描かれる。
黒澤映画にたびたび登場する年長者が若者を導く図式だ。
「姿三四郎」から始まり「野良犬」も「七人の侍」も「椿三十郎」もそうだった。

さて、後半だが、貧困と虐待で心を閉ざした少女二木てるみと若い医師加山雄三の心が通じるまでのエピソードが中心になっている。
この部分は原作の山本周五郎ではなくドストエフスキーから想を得ているらしい。
短いシーンの積み重ねで二人の気持ちがほぐれていくさまを描いているが、今回見直して、何度も落涙した。
黒澤にはめずらしく泣かせる演出だったのと、やはりいたいけな子供の映画は観客の涙を誘う。
まして、この後半は黒澤が映像テクニックの全てをつぎ込んで本気で泣かせに来ているからね。
この本気を出した時の黒澤は本当にすごい。

もうひとつ印象的だったのがラストシーンだ。

三船は加山を御番医に推薦するが、加山は療養所に残ることを希望する。
療養所への帰り道での二人の会話。

「お前は馬鹿だ」
「先生のおかげです」
「若気でそんなことを言っているが後悔するぞ」
「お許しが出たんですね」
ここでテーマ曲が高らかに響く。(ブラームスの交響曲第一の第四楽章に似せて書けと黒澤が作曲家の佐藤勝に依頼したというが、理想主義が勝利を収めるのにふさわしい曲)
「もう一度言う、お前は後悔するぞ」
ここで加山が三船の前に出て振り返り
「試してみましょう。ありがとうございました」と一礼
「ふん!」
ここで二人はフレームアウトし、療養所の門が画面に広がり、さらに高らかにテーマが流れ映画は終わる。

ラストシーンでばたばたし勝ちな黒澤にしてはめずらしくすっきりした見事なシーンだ。
また、黒澤の年長者が若者を導く図式の中で初めて、若者が年長者を超えていくことを暗示した希望にあふれたシーンだ。
残念ながら、黒澤はそのような映画を撮らなかった。

テーマ : 日本映画
ジャンル : 映画

『椿三十郎』の入江たか子

AvatarA
NHKBSで黒澤の娯楽作の一挙放映で『椿三十郎』を観た。
黒澤作品の中で最も肩の力が抜けたユーモアに彩られたチャンバラアクションだ。

入江たか子の城代家老の奥方と三船三十郎のやりとりは、どれも面白いが、次の場面は別のものが見えて興味深かった。

拉致された城代家老(伊藤雄之助)を心配する奥方(入江)と娘(団令子)が心配する。

城代が無理やり詰め腹を切らされるんじゃないかと心配する若侍の加山雄三と平田昭彦。

それを聞きとがめた入江。

加山「おそらく・・・」
入江「"おそらく"なんですか?」
加山「おそらく・・・詰め腹を・・・」
団「どうしましょう、おかあさま」

入江は少しも動ぜず、にこやかに

入江「大丈夫ですよ。お父様はあれでなかなかのたぬきです。
そうやすやすとは詰め腹など切らされるもんですか」

ここできりりとした表示でむき直り

入江「それでみなさん、これからどうなさるつもりです?」
加山「まず、おじの行方をつきとめて奪い返すことです。それから・・」
三船「それだけで沢山だ。
奴ら城代家老に自分の罪を押し付けるつもりで、何のことはねえ白状してやがる。
城代を奪い返せは奴らそれっきりだぜ」

入江はにっこりうなずいて

入江「その通りでしょうね」
平田昭彦「しかしうまく奪い返せるかな?」
三船「奪い返せなきゃ、こっちがそれっきりだ。」

と討議終了をとらえて、

入江「ではよろしくお願いします」

とふかぶかとお辞儀

入江「でも、余り手荒なことはなさらないように。」

額をかく三船
この後、有名なやりとりに

入江「ところであなたのお名前は?」
三船「はあ、名前ですか?私の名は」

庭を覗き込む三船
つられて覗き込む奥方と若侍たち

三船「椿三十郎、もっとももうすぐ四十郎ですが」


今回見直して、この場面の入江たか子のさばき方が見事なのに驚いた。

まず、チームの動揺を沈め、次に部下に現在の課題の対応策を議論させる。
それに結論を出し、方向性を決定し、「よろしくお願いします」と指示を出す。
ふんわりした雰囲気の為、上から命令を受けた気がしない。
最後に「手荒なことはなさらないように」と部下が暴走しないように歯止めをかける。


これって、サラリーマンにとっての理想の上司じゃない?


AvatarH2

確かにね。

それがまた女性上司となると、先見性があると言えるのかな?




AvatarA
さすがにそのような先見性はないと思う。
元々は「若侍達が戦っているゲームの勝利条件を観客に分からせる」為の説明台詞だったのを、脚本と演出のウデで楽しいシーンに仕上がったんだと思う。
円熟期の職人芸というところで、新たな時代を先取りした訳じゃないだろう。
「本当によい刀は鞘に入っている」などと保守的な台詞を是とするこの後期の黒澤は『素晴らしき日曜日』 『野良犬』の頃に感じられた新しい時代の息吹は残念ながら無くなっている。

テーマ : お気に入り映画
ジャンル : 映画

『隠し砦の三悪人』は黒澤の『ローマの休日』

AvatarA
NHK-BSで『隠し砦の三悪人』を放送してたので観た。
10回は観ていると思うけど、面白かった。

特に上原美佐が魅力的だった。
ど素人を黒澤がこの映画の主役に抜擢した。
気品があるが野性味と行動力があるゆき姫役、一本調子の台詞まわしだが、それがこの映画にはピッタリ。

合戦に敗れた秋月家の姫として、敵中を突破するのだが、喋ると姫だとばれるのでオシを演じる。
オシなので耳も聴こえないふりをしなくてはいけないので中々厳しい状況だ。
ヒッチコックならこの設定でさんざん観客をヒヤヒヤさせただろうが、アクション優先の黒澤はこの設定はスルー。
素人に余り喋らせるとボロが出るので思いついた設定のようにも思える。

さて真壁六郎太(三船敏郎)の一行は、山名領で色んな危機に遭遇しては切り抜ける。

関所の検問、宿屋では秋月の娘を助け馬を失う、太平(千秋実)と又七(藤原釜足)は隙あらば金を持ち逃げしようとする。
中でも六郎太と山名の豪傑田所兵衛(藤田進)との一騎打ち、六郎太が勝利するが、首を取れという兵衛に「また遭おう」と言って立ち去る。
そして逃走劇のクライマックスにくる山名の火祭りは躍動感溢れ印象的だ。

真壁六郎太とゆき姫は山名から脱出寸前で捕らえられ、明日は処刑という夜、首実検の為田所兵衛がやって来る。
初めてこの映画を見た時、このシーンから見始めたのを覚えている。

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テーマ : 映画感想
ジャンル : 映画

黒澤のスローモーションについて

AvatarA
先日Hと『七人の侍』を見た時に気付いたことを記録しておきます。

志村喬が盗賊を始末するシーンと宮口精二が果し合いで相手を切り捨てるシーン。
いずえれも斬られた方がスローモーションで倒れる。

後にペキンパーが多用し、殺しの美学とか言われたが、黒澤とペキンパーは使い方が違う。
ペキンパーは、殺害シーンをじっくり、ある意味美しく見せる、つまりは美学が感じられる。
黒澤にはそれを感じない。

では黒澤のスローローションシーンは何の為にあるのか?

よくゾーンに入ったアスリートが「相手(やボール)の動きがゆっくり見えた」という。

極度に神経が研ぎ澄まされた状態になると人間は視覚で得た情報を高速に処理することが出来るんだと思う。
その為に相手がゆっくり動いているように見える。
これは人間誰しも少しは経験したことがあると思う。
子供が車道に飛び出しそうになった瞬間、親は息が詰まり周囲の状況を鮮明に知覚する。


黒澤のスローモーションはこのゾーンに入った体験を観客に思い起こさせる。

そして我々は菊千代や勝四郎と共に、人生に滅多にない息が詰まるような瞬間を体験する。
こうした強烈な体験が観客を戦国時代に引きずり込み、侍たちといっしょに冒険している気にさせるんだと思う。



以下つけたし

「黒澤明は具体的に何が凄いか?⑩七人の侍」で、菊千代が燃える水車小屋をバックに赤ん坊を抱いて川の中にへたり込むシーンもスローモーションだと述べたけど、今回見返してみるとスローモーションではなかった。

しかし、普通の映像と何かが違う感覚はあった。
もしかすると、少しコマ落としになっているのかも。
いずれにしても、インパクトのあるシーンなので、黒澤が何か映像的テクニックを使っている可能性が高い。
次に見返す時には注意しておこう。

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テーマ : 邦画
ジャンル : 映画

それはまた別の話5

AvatarA
「第四の壁を破る」を話題にした時に、テンペストのラストは黒澤明の『素晴らしき日曜日』に似ていると話した。

その話をしよう。

まずは過去の記事の引用から。


デートの最後は夜の野外音楽堂での未完成交響楽の想像上の演奏会。
雄造は指揮者のパントマイムを行い想像力で音楽が聞こえるはずだと昌子に言う。
木枯らしが現実に引き戻す。
うなだれる雄造、はげます昌子。
再び舞台に立つ雄造、風が強くなる、くじける雄造。
はげます昌子、だが雄造はうなだれたまま。
ここで昌子は舞台に立ち、泣きながら映画の観客に拍手を呼びかける。
観客からの拍手が聞こえた(ようにふるまう二人)雄造が勇気を取り戻す。
オーケストラの音あわせの音が聞こえてくる。
指揮をする雄造、未完成交響楽が聞こえてくる。
木枯らしに舞う木の葉の映像が出だしのメロディにマッチしている。
この映画のクライマックスだ。

黒澤明は具体的に何が凄いか?③素晴らしき日曜日(2010.5.4)より
http://spacecowboys33.blog130.fc2.com/blog-entry-111.html



この時、の昌子(中北千枝子)は、第四の壁を破って、映画の観客に語りかけたように思えた。

でも、見返してみると、彼女は野外音楽堂の観客席に向かって、彼女の想像上の観客に、向かって訴えている様にも見えた。
この中途半端さは致命的だ。
これでは肩すかしを喰らいそうで映画館の観客は拍手できない。

黒澤のシャイな一面が邪魔をしたのかもしれない。
こういうのは、どうどうとやってのけなけりゃ、見てるほうが恥ずかしくなるものだ。

テーマ : 映画レビュー
ジャンル : 映画

黒澤の失敗

AvatarA
以前に「黒澤明は具体的に何が凄いか?(16)天国と地獄」で私はこう書いた。

「私はこの映画は黒澤明のバベルの塔だと思う。
壮大な望みを持って始めた偉大な事業が、ちょっとした食い違いから挫折する。
そしてそれがその後の人類の悲劇の始まりだったというバベルの塔。
どうすれば良かったのか分からない。
おそらくその答えはない。
ただ、残念なだけだ。」

あの時「答えはない」と語ったその答えの糸口らしきものが、BSのドキュメンタリー「昭和偉人伝」にあった。

番組は年代を追って黒澤の仕事を取り上げていった。

「七人の侍」の企画段階のノートにこうある。

「観客を感動させる為にリアルでなければならないし、大胆な表現も必要だ」

単純で分かり易い意図だ。
あの力強い傑作はこのような精神から生まれた。

この日本映画黄金期から10年後、黒澤は「赤ひげ」の制作発表で斜陽の日本映画界にこう呼びかけた。

「日本映画の危機を救うのは作る人々の情熱と誠実以外ない」

この2つ製作意図には大きな差がある。

「七人の侍」の企画意図は、「面白い映画を作ろう」だけど、「赤ひげ」のそれは、「みんな真面目に働け」だ。

この差は大きい。

よく人は大義の名の下に自分の都合や意見を通そうとする。
それが権力を持った人間なら周りが迷惑する。

結果「赤ひげ」は、技術的には最高だが、盛り上がりに欠ける大作になった。

手段が目的になっちゃいい仕事はできない。
そんなことに気付かないはずはないんだが、黒澤天皇にはだれも助言しなかったんだろう。
黒澤は失敗を繰り返し、自分の殻にとじこもっていった。

アメリカのようにプロデューサーの権限が強ければ、天皇にならなかったかもしれない。

言っても仕方ないことだけどね。

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テーマ : 邦画
ジャンル : 映画

黒澤明は具体的に何が凄いか?⑯天国と地獄

AvatarA
『天国と地獄(1963)』

会話劇で始まり、黒澤の悪魔的な面を見せる映画。

大学生のときにオールナイトで見た黒澤の傑作3本目だ。
(他の2本は「酔いどれ天使」「生きる」)

黒澤としては営利誘拐の卑劣さを描こうとしたらしいが、例によって映画としての面白さがそれを上回っている。

原作はエド・マクベインの『キングの身代金』で重要なプロットは「金持ちの子供を誘拐したと思ったら、運転手の子供だった。しかし犯人は金持ちに身代金を払えと要求。彼は運転手の子供を見殺しに出来るか?」というもの。

前半はこの原作のプロット通りに話は進む。

横浜の街を見下ろす高台の大きな家。
ナショナルシューズの常務権藤(三船敏郎)は重役連(伊藤雄之助・中村伸郎・田崎潤)の社長追い出し計画に加わるように誘われるシーンから始まる。
重役連と意見が合わない三船は彼らを追い返す。
見送りに出た三船の片腕の河西(三橋達也)に声をかける。

伊藤「奴さんどんな切り札を隠してるんだ?」
三橋「は?」
中村「とぼけんなよ。片腕の君が知らないとは言わせないぜ」
田崎「よほどの自信がなけりゃ我々を追い出せる訳がない。何だって奴は自信たっぷりなんだ?」
三橋「どうして直接お聞きにならなかったんです?」
伊藤「減らず口を叩くな。あいつが何をたくらんでいるか知らんが、それをぶっ潰す手助けをしてくれるなら重役の椅子を約束してもいい」
三橋「誘惑しないでくださいよ」
伊藤「いつまでも権藤の片腕でもあるまい。よく考えるんだな」

状況説明の為のセリフだが、芸達者な俳優陣のおかげで楽しいアンサンブルになっている。

このように前半は、権藤邸の居間での会話劇に終始する。

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テーマ : 邦画
ジャンル : 映画

プロフィール

spacecowboys A H

Author:spacecowboys A H
Space Cowboys は、2人の親父です
"A" システムエンジニア・
   中日ファン・世情に疎い
"H" 総務畑・てっちゃん・
   阪神ファン・雑学が得意
2人ともイーストウッド好きの還歴男

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